蘇州有軌電車

蘇州市という街
蘇州市は中国・長江下流に位置する都市で、かつてマルコポーロが「東洋のベニス」呼んだほど、運河が縦横に気づかれ、そこを行き交う船の風景がとても美しい町である。
蘇州市は大変に広い町だが、大きく分けて古くから発展し世界遺産に指定された庭園が数多く存在する旧市街地と、その周辺の太湖や陽澄湖など水辺に隣接する郊外エリアに分けられる。

蘇州有軌電車の位置
蘇州の路面電車(蘇州有軌電車)は、旧市街地から西側にやや離れた蘇州楽園を起点とする蘇州高新区(ハイテクパーク)に設置され、開発区内の域内交通機関として位置づけられている。
現在までにこの蘇州楽園から中国第三の大きさを誇る太湖湖畔の開発区エリアまでの1号線(T1)として2014年10月に蘇州楽園-龍康路間(18.9㎞)が開通している。
全部で5路線80キロが計画されているが、2017年9月時点で開通しているのはこの区間のみである。
ちなみに蘇州楽園とは、獅山という小山を利用した蘇州の遊園地のことであるが、近年はここを拠点としてビジネス開発が進んでいるエリアでもあり、日系企業なども数多く進出し、すぐそばには日航ホテルも建てられていることからもその様子が伺える。

しかも最新のニュースによると、どうやらこの蘇州楽園の閉鎖が決まったようで、跡地にオフィスビルの建設が計画されており、レジャー拠点の歴史が終わってしまうようだ。
蘇州楽園が閉鎖してしまうと、この地の名称も将来的には変わってしまうかもしれない。
この蘇州楽園の地には蘇州市地下鉄1号線の蘇州楽園駅が設置されており、すぐそばには周辺の各都市への都市間バスが発着する蘇州西バスターミナルなども隣接する。

この蘇州西のターミナルはショッピングモールも設置されているが、どうも建物ばかり大づくりで、賑わいに欠け閑散とした状態になっている。
将来的に開発区の進展とともに、このショッピングモールも賑わうことになるのだろうか?

蘇州有軌電車の様子
蘇州楽園の駅は、島式で道路中央部に独立した状態で設置され、地下道を通してしか出入りできない構造になっていて、この地下道を通じて上述の地下鉄駅やバスターミナルに繋がっている。
開通当初は地下鉄同様に駅で乗車券を購入する方法を取っていたようで、券売機っぽい機械が設置されているが、今年7月に全線均一価格に改められ、現時点ではバス同様に車両内で運賃徴収する方式になっているため、この機械は稼働していない。

従って、現在は乗車後に運賃を支払う方法で、運賃は全線統一で2元であるが、市民カードと呼ばれる交通カードを使用すると30%オフとなり1.4元となる。
また回数券の類もあるようで、20回券、50回券、100回券などがあり最高1回1.2元まで割引される。
運行間隔は時間帯によって細かく設定されているようだが、概ね6分~10分程度に設定され、バス並みに結構本数は多いといった印象である。
車両はちょっと特殊でカーブを曲がりやすいように通常なら2両程度の長さの車両が5分割され連節していている。
そのため、車両の長さの割りには座席数がかなり少なく、つり革乗車が前提といった雰囲気である。

蘇州有軌電車の沿線風景
この蘇州楽園駅を起点として蘇州有軌電車は、まっすぐ西へ向かう。
設置駅は起終点を合わせ10駅で、全列車が全区間を走り区間運転はなく全行程38分で走り抜ける。
沿線はさすが開発区というだけあって、綺麗に区画整備された幅の広い高規格道路が縦横に何本も伸び、その中を蘇州有軌電車は進む。
蘇州有軌電車は路面電車には分類されるものの原則として、幅の広い幹線道路の中央部に設置された専用敷地内を走る。
一応、交差点を横切る時や道を曲がる場合は、一般車道と共有した敷地を走るが、それ以外は原則として専用敷地である。

また信号設備と運行信号の連動が図られているようで、信号で足止めを食らうケースは非常に少ない様な印象だった。
専用軌道を走るため、最高速度は時速70キロと地下鉄並みのスピードが設定されていて、どうやら中国国内の最高速度とのこと。
市街地域では比較的抑えて走っているようだが、郊外の駅間の長い場所では最高速度に近いスピードで走る。
全線を通して沿線はほとんどフラットな地形だが、郊外に抜けると周囲に小山もチラホラ見え始め、その合間を車両はフラットな軌道を走り抜ける。

周囲の山は公園として整備されているなど、市民の憩いの場として整備されている様子が伺えるが、正直言ってまだ閑散としている印象は否めない。
そして列車は高新区管委会駅に到着すると、蘇州楽園駅から乗ってきた乗客は概ねここで降りてしまう。
どうやらここが蘇州高新区(ハイテクパーク)の中心部らしく、立派なオフィスビルやショッピングンセンターも周囲に見える。

ただ、街の造りがゆったり過ぎるのか、まだ開発途上ということなのか分からないが、やはり賑わいには程遠い印象である。
そして、このまま蘇州有軌電車は太湖方面に向かい、現在の終点の龍康路に到着する。

正直言って、龍康路駅の周りにはほとんど何もない状態であり、辛うじて公衆トイレがあり、公園らしき整備が行われているだけである。
一応、ここから先太湖方面へは二期区間の線路が続いており、2017年中に完成する計画なので年末にはこのまま太湖湖畔まで行けることになるようだ。
また、すぐそばには2号線(T2)の駅も整備が進んでおり、こちらもネット上の情報では2017年中に完成する予定のようだが、本来は上半期に開通するといった情報もあり、若干遅れているというのが実態のようである。

まだまだ周囲の風景には余裕がある蘇州有軌電車の現在の状況だが、今後路線の延長が進むにつれ、街の開発がどのような速度で進むのか将来への機体と不安が入り混じるこの街である。
蘇州有軌電車の基本情報まとめ
◎蘇州有軌電車1号線一期の路線・駅
蘇州楽園-新区公園-何山路-白馬潤生態園―馬潤路―陽山南―高新区管委会-龍山路―嘉陵江路-龍康路
◎蘇州有軌電車一期区間の開通日
・2014年10月26日
◎蘇州有軌電車一期区間の運行時間帯
蘇州楽園駅発 06:10~22:00
龍康路駅発 06:10~21:00
蘇州有軌電車一期区間の運賃
・全線2元均一 (市民カード利用で1.4元と)その他回数券あり。