上海・張江有軌電車

上海の路面電車の歴史
中国の改革開放以後、急速な再成長を遂げた上海市、その発展の象徴となった黄浦江の東側の浦東新区と呼ばれるエリアに、張江高新区(張江ハイテクパーク)と呼ばれる開発区が存在し、その域内交通手段として「張江有軌電車」という現代型路面電車が建設された。
上海市内にはかつて租界時代のイギリス租界にも路面電車が存在し当時の雰囲気を再現した映画村にその面影をたどることが出来る。

しかしその路面電車たちは、他の大都市の例に漏れることなくモータリゼーションの波に追われ、1963年の8月を最後に上海の街の中から姿を消した。
そして約半世紀の時を経て改めて登場したのが張江有軌電車である。
上海市には既に地下鉄も登場しており路線を伸ばしていたが、大量輸送に適した地下鉄は建設コストも高く小回りが利かず、また公共路線バスは渋滞に巻き込まれやすいため、その中間の輸送量を担う輸送機関として張江有軌電車が建設された。
上海・張江有軌電車の特徴
この張江有軌電車は非常に特徴的なのが、他のLRTと呼ばれる現代型(次世代型)路面電車が、複式レール(レールが2本)なのに対して、ここでは1本の単式ガイドレールしかない中央案内軌条方式であることである。
つまりレールは、車両の走行位置のガイドは行うが、推進力はタイヤ車輪で行われており、ここが決定的に他の路面電車と違う。
ゴムタイヤ式はレール接触ではないため、騒音も抑えられ乗り心地に優れていると言われているが、一方でタイヤの摩耗が激しく保守費用が嵩むともいわれる。
また加速減速に優れ、駅間の短い路面電車においては優位性が高いようである。

上海・張江有軌電車の駅
張江有軌電車の起点となる「張江地鉄站」駅は文字通り地下鉄2号線の張江高科駅のそばにある。
というか従来は2号線の張江高科駅の目の前に位置する場所であったはずなのだが、高架駅だった2号線の駅の方が上海浦東国際空港方面への延伸の際に地下化されてしまい、元の場所から東に200mほど移動してしまったのである。
元の駅の高架の建物はその後残されており、その元駅前というべき場所に、張江有軌電車の起点駅はある。
張江有軌電車は複線で敷設されているが、この駅は乗降車別の対向式のホームとなっており、車両は路線の末端側の引き込み線で折り返して、乗車用ホームへ入線する。

駅に掲示されている路線図は、市内のバス路線などで主に使われているものであり、この張江有軌電車は、鉄道というよりバスに近い存在として扱われていることがわかる。
また張江有軌電車1路と記されていることから、現在開通している路線は1号線で、2号線以降の計画構想があるようだが、現在のところ建設が進んでいるといった情報は無い。

上海・張江有軌電車の沿線の風景
張江ハイテクパーク
「張江地鉄站」駅を出ると、路線はすぐに南に向かい、静かな工場地帯を走り始める。
工場地帯といっても、大きな機械部品を組み立てるようなメーカーではなく「ハイテク」の名にあるように電子部品や薬品などであり、重工業の工場地帯で感じるような殺伐とした雰囲気はそこには感じられない。
あたかも高級別荘地か公園のように、緑も多い風景で、街路樹や工場内の植樹が多く、その隙間から各工場の建屋が見えるといった印象である。
また沿線には大学なども多く配置され、広々としたキャンパスや研究棟が沿線の左右に広がりを見せ、朝晩の通勤通学時は人の行き来が増えるようだが、日中は人が少なめで総じて静かな町である。

ローカルな中国の雰囲気
ただ、その雰囲気も金科路駅を過ぎるとやや雰囲気が変わる。
いわゆる中国のほんの少し前、10~20年前の雰囲気を感じる街となる。
決して趣のあるというほど古びてはいないのだが、直前の開発区の整然とした街並みに比較するとローカルな中国チックな雰囲気が漂う街となり、電動バイクが行き交う風景が見受けられ、幹線道路も近いため比較的騒々しいエリアになる。
そして沿線は住宅開発の進むエリアに突入し、緑豊かな道を抜けて終点へ到着する。
張江有軌電車の終点は自然豊かな場所
終点の張東路金秋路の停留所は緑豊かな空間の街路の真ん中だが周囲に何もない場所である。

売店すら見当たらず、緑の空間の中に分け入って水辺でたたずむ以外は寄り道もままならないかもしれない。
天気のいい日はのんびりピクニックも気持ちよさそうだが、帰りも来た道を戻るしかないだろう。
最先端の開発区を走る現代型路面電車にとって、目指すべき終点は自然豊かな世界であればよく、必ずしも街と街を結ぶ必要はないのかもしれない。

上海・張江有軌電車の基本情報まとめ
◎張江有軌電車1線の路線・駅
張江地鉄站―碧波路高科路―華佗路科苑路―蔡佗路金科路―蔡佗路哈雷路-哥白尼路李氷路―紫薇路高斯路―高斯路張江路―張江中学―広蘭路祖沖之路―広蘭路丹桂路―丹桂路青桐路―丹桂路張東路―張東路金秋路
全区間9.8キロ
◎張江有軌電車1線の開通日
・2009年08月(正式開業は12月31日)
◎張江有軌電車1線の運行時間帯
張江地鉄站駅(張江高科駅前)発 06:20~22:25
張東路金秋路駅発 5:45~21:45
◎張江有軌電車1線の運行間隔
ピーク時 10分間隔
ピーク時以外 15分~20分間隔
張江有軌電車1線の運賃
・全線2元均一 (上海交響交通カードの利用は可能だが優待はなしで)その他回数券あり。
張江有軌電車の公式サイト
公式サイト無し
張江有軌電車の運営会社
上海浦東現代有軌交通有限公司